「ドッグランでほかの犬を噛んでしまった」ということで相談を受けました。ドッグランに遊びに行ったときに、去勢していないオスの犬と争いになり、相手の耳に小さなケガをさせてしまったそうなのです。『ケンタ』もその犬も、去勢はしていませんでした。
飼い主さんによると、ケンタは誰彼かまわず噛みつくわけではないそうです。ドッグランで、相手の犬もケンタのことが気になり、しつこくしてきていたそうです。お互い去勢をしていない男子ですから、どうしても決着をつけなければならなかったのでしょう。
「やるかっ!」
「おう、やろうじゃないかっ!」
なんてやり取りがあったのだろうと思います。それは、ある意味自然な成り行きとも言えます。放っておけばいいのについ、ということは、よくある(?)ことなのかもしれません。人間から見ても、とても人ごととは思えませんね(苦笑)。
アイコンタクトは、犬にとって非常に大切な意味があります。それは「あなたに用がある」というボディラングージになっているためです。「用」にはいろいろな種類があります。
代表的なもののひとつは、「遊ぼう!」というメッセージ。相手にちょっかいを出したいときに使います。
犬が両前足を地面に着けて上半身を低くし、お尻を高く上げてうれしそうにしているとき(これを「プレイボウ」と呼びます)は、相手と遊びたいのです。誘われた相手は、付き合うなら見つめ返し、合図で遊びがスタート。同じようにプレイボウをすることが多いようです。友好的な犬は、人がプレイボウのまねをしてやると、喜んで応えてくれます。
とてもかわいいので、ぜひやってみてください。(ただし、無視されて「うざい」という顔をされることもあるのでご注意を……)
もうひとつは「やるか!」というケンカの吹っかけです。四肢をまっすぐしっかりと地面に着け、耳としっぽを高く上げ、「バックル」と呼ばれる首筋あたりの毛を逆立て、じっとして動かずに相手の目をにらみつけるようなアイコンタクトを取ります。これは一触即発、高い確率でケンカが始まる可能性があります。
どちらかが目をそらした場合には、「あなたと戦う気はありません」というサインになってケンカには発展しないのですが、どちらも引かない場合はケンカが始まってしまいます。
このように、犬同士のあいさつでケンカになりそうなボディラングージが見られたら、(とくに去勢していないオス同士の場合には)注意すべきです。対処法としてはまずはゆっくり目線を合わせないようにしつつ、刺激しないように落ち着いて気をそらしながら徐々に引き離すのがよいでしょう。
このときに飼い主さんが大きな声を上げたり、慌ててギュッとリードを引くと、かえって犬を興奮させることになります。それをきっかけにケンカが始まる場合もあるので注意が必要です。
また、最初は仲良さそうに鼻先でクンクンとお互いの臭いを嗅いでいたのに、急にガウガウ始まった、という話もよく聞きます。これは、最初に臭いを嗅ぎ合うときに決して仲が良いわけではなく、臭いを嗅ぎ合ってみた結果、お互いに同格くらいであることがわかったケースが多いようです。{‥で、どうする?お前が引き下がるか?それ七もやるか?}というような暗黙のやり取りがあった末、両者引かない場合に決着をつけようとして、ゴングが鳴らされてしまうのです。
ですから、ケンカの心配がある場合には、軽くでもクンクン相手の臭いを嗅いだら、すぐに引き離すか、最初からあいさつをさせないことをおすすめします。